離婚に際して決めるべき事
離婚に際して決めなければならない事、決めておいた方が良いことを説明しましょう。
1.親権者の指定
夫婦に未成年(20歳未満)の子供がいる場合、夫婦の共同親権となりますが(民法818条)、離婚する際にはどちらかを親権者と定めなければなりません。親権者の権限として、子の監護及び教育をする権利(民法820条)、居所指定権(民法821条)、財産管理権(民法824条)などがあります。
父母のどちらが親権者となるのかを決めないと、協議離婚の場合には離婚届が受理されません。調停離婚の場合でも親権者を決めなければなりません。
夫婦の間で親権者を決めることができない場合には離婚訴訟となり、裁判官が判決で親権者を決めます。この場合、裁判所は子供にとってどちらを親権者とすることが幸せかとの観点で決めます。
親権者と監護者とを分けることも可能ですが、あまり行われていないようです。
2.財産分与
財産分与とは、結婚してから離婚するまでの間に夫婦が形成した財産を清算することです(民法768条)。例えば、夫が働いた給料で家を建て、預金するなど夫名義で財産を形成し、妻は専業主婦として家庭を守ってきたケースでは、妻が家庭を守ってきたからこそ夫名義で財産を形成できたといえます。したがって、財産は夫名義であったとしても妻は潜在的に持ち分を有していると考えられます。離婚の場合、妻は夫に対してその潜在的持ち分の清算を求めることができる、これが財産分与です。財産分与の割合としては、夫の特殊な能力により財産が形成されたような事情がない限り、実務上、原則として2分の1とするルールが確立されています。
財産分与の対象としては、自宅(住宅ローンが残っている場合には自宅の時価から住宅ローンの残額を差し引いた残額)、預貯金、生命保険、株式、自動車などがあります。退職金については、支給されるのが遠い将来である場合には金額はもとより支給されるか否かも不確定であるため問題とされていますが、一定の金額が認められることも多いようです。夫婦の固有財産(結婚前から持っていた財産や親から相続した財産)は財産分与の対象とはなりません。
具体的には、夫の名義で自宅1000万円(時価2500万円から住宅ローンの残金1500万円を控除した残額)、預金500万円、計1500万円があり、妻の名義で500万円の預金がある場合で説明しましょう。夫婦の財産は合計2000万円となりますから、夫と妻の各人の取分は1000万円となります。妻名義で既に500万円の預金がありますから、妻は差額の500万円を夫に対して請求することができます。
財産分与を決めなくても離婚から2年間は財産分与を請求することはできますが、離婚の際に決めておく方が良いでしょう。
3.慰謝料
離婚の原因が夫の浮気、暴力など、主として夫の側に離婚の原因がある場合、妻は夫に対して離婚することによって受けた精神的損害の賠償を求めることができます。これを慰謝料といいます。慰謝料の金額は、実務上は300万円程度とされており、個々の事情によって増減されます。
慰謝料は離婚から3年以内に請求することができますが、財産分与と同様に離婚の際に決めておく方が良いでしょう。
4.養育費
母が親権者となって子供を引き取って育てる場合であっても、父と子供の関係は残りますから、父は子供の養育費を負担する必要があります。具体的には、子供の養育費として年間100万円要するとした場合、その100万円を父と母がその収入に応じて負担することになり、母(元妻)は父(元夫)に対して養育費の支払を請求することができます。養育費を支払う子供の年齢については、実務上、20歳までとされることが多いようです。
養育費の算定方法については、家庭裁判所により養育費算定表が公表されており、簡便に算定することができます。特殊な事情がある場合には修正されます。
養育費についても、離婚後に請求することも可能ですが、離婚の際に決めておく方が良いでしょう。
5.年金分割
従来、夫婦が離婚した後、働いていた夫のみが年金を受給し、妻は年金を受給することができないという問題がありましたが、平成19年の法改正により、離婚に際して年金分割の請求ができるようになりました。
対象となるのは、厚生年金と各種共済年金のみとなります。夫が受け取る年金の一部をもらうのではなく、婚姻期間中に夫が支払った掛金のうち50%を上限として妻が支払ったものとして記録をつけかえ、妻が自分の受給資格を満たした場合に自分の年金として受給することができます。
年金分割は離婚から2年以内に行うことができますが、離婚の際に決めておく方が良いでしょう。
〔参考記事〕
6.面会交流(面接交渉)
夫婦が離婚して母(元妻)が子供を引き取った場合、父(元夫)から母に対して子供に会わせるよう求められることがあります。これを面会交流といいます。従来は面接交渉と呼ばれていましたが、最近は面会交流と呼ばれています。
母(元妻)が子供を引き取った場合であれば、父(元夫)から求められれば検討すればよいでしょう。