夫名義のマンションの潜在的共有持分を有するとの妻の主張が認められなかった事例

 夫単独名義の不動産がある場合、離婚の際の財産分与により共有財産の清算がなされます。

 しかし、財産分与として不動産の清算がなされなかった場合、妻は夫名義の不動産に自分が潜在的持分を有すると主張することができるのでしょうか?

 東京地裁平成18年9月27日判決は、離婚誓約書が作成されており、夫が妻に給付金を支払うなどの規定がなされている事案で、「本件合意時における夫の資産・収入状況や前記検討したところに加えて、本件誓約書の記載からすると、本件合意に基づく夫から妻に対する給付には、妻への財産分与もすべて包含されているものと認めるのが相当であるから、妻が本件マンションの潜在的共有持分を有するとの主張についても採用することはできない。」と判示して、夫の妻に対するマンションの明渡し請求を認めました。

 上記判決は、離婚に際における夫婦の財産状況を詳細に認定したうえで、合意書により財産分与としての清算はなされたと認定したものです。

 一方、財産分与の対象とならなかった不動産が共有関係にあるとされることもあります。これにつきましては、コラム「離婚財産分与の対象とならなかったオーバーローン不動産の所有権の帰趨」にて東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を紹介していますのでご参照ください。

(弁護士 井上元)