離婚調停において、子供の学費等の負担について取り決められることがありますが、この学費の趣旨につき争いになった東京地裁平成19年3月2日判決
の事例を紹介しましょう。夫婦は、夫婦関係調整調停において離婚するとともに、養育費等につき次のような調停条項を定めました。
(1) 夫は、妻に対し、長女及び二男の養育費として、平成13年2月から同人らがそれぞれ大学を卒業する月まで、1人につき1か月10万円ずつ、毎月末日限り、妻の指定する口座に振り込んで支払う。
(2) なお、夫は、同人らの入学金、授業料、修学旅行などの課外活動費等の学費(ただし、所属学校に対して直接支払うべき金員)及び入学諸雑費、部活の合宿費を別途負担する。
(3) また、夫は、長女が塾に通った場合にはその費用(高校1年から3年までの間)を月額2万円を限度として負担する。
(4) 月額5万円以上の医療費の負担については、夫は別途協議に応じる。
ところが、夫が、上記②の学費等は特定の私立学校の学費等を意味するものではなく、将来の妻と夫の状況や意向、子供らの意向に照らし、協議のうえで決定される学費を示すものであったと主張して支払わなかったことから、妻が夫に対して、上記調停条項に基づき支払いを求めたものです。
判決は、
「離婚調停成立時、長女と二男は私立学校に在学していたこと、長女は私立学校への進学を予定していたこと、長女と二男が在籍していた私立学校はいわゆる一貫校であること、被告と長男も小学校から大学まで私立の一貫校に通ったこと、長女と二男が在学していた私立学校を退学することが相当な特別な事情はなかったこと、被告は離婚調停成立後の平成14年1月になって私立学校を退学することを求めたこと等が認められる。」と認定したうえで、
「学費等については、私立学校の学費等を含むと解することが相当である。なお、同項中の「部活」について、大学の同好会を除く合理的な理由が認められないから、これを含むと解すべきである」と判示して妻の請求を認めました。
上記調停条項は相当詳細な条項となっていますが、これでもその解釈をめぐって争いが生じてしまいました。調停条項を決める場合には念には念を入れることが大事です。
(弁護士 井上元)