調停離婚の場合、調停が成立した時点で離婚が成立します。協議離婚の場合は離婚届を提出した時点で離婚が成立するのですが、調停離婚の場合、調停が成立した時点で離婚が成立し、事後的に届け出ることになるのです。
離婚の届出方法は戸籍法で規定されています。
戸籍法77条1項で「第63条の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。」と規定されており、離婚の裁判とは離婚の調停と離婚訴訟において離婚が命じられた判決を指します。判決は送達から2週間しても上訴がないと確定しますが、調停の場合は直ちに確定します。
77条1項で準用されている63条では、
1項「認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。」
2項「訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。」
と規定されています。
まず1項により、調停が成立した日から10日以内に調停離婚を届け出る必要があります。届出期間は、届出事件発生の日から起算されますので(戸籍法43条1項)、調停成立の日から起算して10日以内に届け出る必要があります。
同じく1項では、「訴を提起した者は、・・・届け出なければならない」と規定されおり、調停の場合、一次的に調停の申立人が調停離婚を届け出なければならないことになります。申立人が届け出ない場合、2項で二次的に相手方が届け出ることができるのです。
戸籍の筆頭者は夫で、妻から離婚調停を申し立て、離婚調停が成立したケースでは、離婚調停が成立した日から起算して(上記のとおり成立日を含みます)10日以内に、妻が役所に調停離婚を届け出ることになります。この場合、妻は新たに自分が筆頭者である戸籍を編製してもらい、その戸籍に移ります。
ところが、夫から調停が申し立てられて調停が成立したケースでは、夫が一次的に調停離婚の届出義務を負うことになり不都合が生じます。夫による届出だけでは妻の新たな戸籍が編製できないのです。
この不都合を避けるため、家庭裁判所の実務では、私も何度か経験していますが、調停条項で「申立人(夫)と相手方(妻)は、本日、相手方(妻)の請求により調停離婚する。」と記載し、妻が戸籍法63条1項の届出をすることができるような措置を講じています。
戸籍法はあまり見る機会がありませんが、結構、ややこしいものです。
離婚の届出方法については法務省HP「離婚届」で説明されていますので参照してください。
(弁護士 井上元)