内縁関係を解消した場合、例えば、A男とX女が内縁関係を解消した場合、X女はA男に対して民法768条の財産分与の規定を類推適用して財産分与の請求をすることができます。
しかし、A男が死亡したことによって内縁関係が解消した場合、
最高裁判所平成12年3月10日決定(最高裁判所民事判例集54巻3号1040頁)は、X女はA男の相続人に対して、財産分与の請求をすることはできないとしています。その理由は「民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相続により財産を承継させることでこれを処理するものとしている。このことにかんがみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。」というものです。それでは、X女とA男が内縁関係を解消した後にA男が死亡した場合、X女はA男の相続人に対して財産分与を請求することができるのでしょうか?
この問題について大阪高等裁判所平成23年11月15日決定(判例時報2154号75頁)は、X女はA男の相続人に対して財産分与を請求できるとしました。
この事案ではX女の請求は認められましたが、内縁関係の場合、入籍した夫婦とは法律関係が異なりますので注意が必要です。
(弁護士 井上元)