離婚訴訟において相手方が有責(例えば不貞)である場合、離婚と共に離婚慰謝料を併せて請求することが多いと思います。
従来、民法上の遅延損害金の法定率は年5%でしたが、令和2年4月1日から改正民法(債権法)が施行され、同日以降、遅延損害金の法定率は3%となりました(尚、あわせて商事法定利率も廃止され3%に統一されています)。
この利率につき、改正民法施行前の不貞を理由として、改正民法施行後に離婚が成立した場合の遅滞に陥る日及び適用される利率につき最高裁判所が判断しました。
尚、同判決では、本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金が認められていますが、請求が判決確定日の翌日であったためこのような判決になったものと思われます(これまでの解説書でもこのようなものが多いと思います)。「離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥る」のですから、判決確定日から遅延損害金が発生するはずです。例えば、交通事故の場合の損害賠償債務は事故日から発生するのと一緒です。
細かい話しですが、最高裁判決が出たのですから気を付けましょう。
最2小判令和4・1・28裁判所HP
離婚に伴う慰謝料請求は、夫婦の一方が、他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求めるものであり、このような損害は、離婚が成立して初めて評価されるものであるから、その請求権は、当該夫婦の離婚の成立により発生するものと解すべきである。そして、不法行為による損害賠償債務は、損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく、遅滞に陥るものである(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。したがって、離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時に遅滞に陥ると解するのが相当である。
以上によれば、離婚に伴う慰謝料として上告人が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥るというべきである。したがって、改正法の施行日前に上告人が遅滞の責任を負った(改正法附則17条3項参照)ということはできず、上記債務の遅延損害金の利率は、改正法による改正後の民法404条2項所定の年3パーセントである。
なお、被上告人の慰謝料請求は、上告人との婚姻関係の破綻を生ずる原因となった上告人の個別の違法行為を理由とするものではない。そして、離婚に伴う慰謝料とは別に婚姻関係の破綻自体による慰謝料が問題となる余地はないというべきであり、被上告人の慰謝料請求は、離婚に伴う慰謝料を請求するものと解すべきである。
(弁護士 井上元)