これまで、渉外離婚事件の国際裁判管轄権について、人事訴訟法、家事事件手続法に明文の規定がなく、解釈に委ねられてきました。
離婚訴訟については、最高裁昭和39年3月25日判決や最高裁平成8年6月24日判決などにより、①被告の住所地国とすることが原則であるが、②原告が悪意で遺棄された場合や、被告が行方不明の場合、原告の住所その他の要素から離婚請求と原告の住所地国との関連性が認められ、原告の住所地国の管轄を肯定すべき事情がある場合等においては、原告の住所地国にも国際裁判管轄が認められると解されてきました。
このような家事事件の国際裁判管轄につき、今般、平成30年4月18日、人事訴訟法等の一部を改正する法律(平成30年法律第20号)が成立し、4月25日に公布されました。
人事訴訟法等の一部を改正する法律(平成30年法律第20号)
例えば、夫婦の一方が他方に対し提起した離婚訴訟事件について、次のいずれかに該当するような場合に、日本の裁判所で審理・裁判をすることができるものとされています。
⑴ 被告の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき(改正後の人事訴訟法第3条の2第1号)
⑵ その夫婦が共に日本の国籍を有するとき(同条第5号)
⑶ その夫婦の最後の共通の住所が日本国内にあり、かつ、原告の住所が日本国内にあるとき(同条第6号)
⑷ 原告の住所が日本国内にあり、かつ、被告が行方不明であるときなど、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があるとき(同条第7号)
施行日
上記改正法の施行期日は、今後、政令で定められることになりますが、公布の日から1年6月以内に施行されることとされています。
コメント
改正法は従来の実務の運用と大きく異なるものではありませんが、従来は法律の明文が無い以上、日本の裁判所で裁判を受けられるのか否か、不安定であったことは否めません。
この点、改正法により、明文化され、日本の裁判所で審理される場合が明確になりました。
参照サイト
(弁護士 井上元)