養育費や婚姻費用とよく似た法律用語として、扶養料という用語があります。扶養料とは何でしょうか。養育費や婚姻費用とはどのように異なるのでしょうか。
扶養料の意義
扶養料とは、扶養義務者が扶養権利者に対し支払う義務があるとされる生活費等をいいます。
誰が誰に対し扶養義務を負うのかについては、民法等に定められています。民法上、「直系血族・・・は、互いに扶養をする義務がある。」と定められているので(民法877条1項)、親は、同項に基づき、子に対する扶養義務を負うこととなります。扶養義務が発生するには、少なくとも、扶養権利者側(子等)に要扶養状態が、扶養義務者側(親等)に扶養能力がなければなりません。
扶養権利者が子である場合、未成熟子でなければ要扶養状態にあるとは認められません。未成熟子とは、未成年者(20歳未満の子)と同義ではなく、身体的・精神的・経済的に成熟化の過程にあるため、就労が期待できず、第三者による扶養を受ける必要がある子をいい、一般的に、自活することのできない大学生等も未成熟子に含まれます。
扶養権利者が未成熟子である場合、扶養義務の内容は、生活保持義務、すなわち相手方の生活を自己の生活の一部として自己と同程度の水準まで扶養する義務となります。
扶養料と養育費等との違い
未成熟子の生活費等を請求する方法としては、①養育費(「子の監護に要する費用」、民法766条1項)請求、②婚姻費用分担請求(同法760条)、③扶養料請求(同法877条1項)、の3つがあります。いずれも、家事事件手続法39条別表第2の審判事項であり、審判の前段階として、調停を申し立てることもできます。
①養育費請求も②婚姻費用分担請求も、子を監護している親(監護親)から、他方の親(非監護親)に対する請求である点は同じです。主な違いは請求の対象等にあり、前者(①)の請求対象は、一般的に、父母が婚姻外(内縁関係)であるとき、又は離婚後における、未成熟子の生活費等のみであるのに対し、後者(②)の請求対象は、父母が婚姻中の間における、未成熟子と配偶者の両者の生活費等です。
①養育費請求も③扶養料請求も、一般的に、父母が婚姻外であるとき、又は離婚後における、未成熟子の生活費等の請求である点は同じです。主な違いは、請求の主体にあり、前者(①)の請求は監護親から非監護親に対する請求であるのに対し、後者(③)の請求は未成熟子から非監護親に対する請求です。
扶養料請求の利用場面
一般的に、子が未成年者である場合には養育費請求(①)が用いられ、子が成年に達した未成熟子(自活することのできない大学生等)である場合には扶養料請求(③)が用いられます。
親権者である監護親が、未成年者である子を代理して扶養料請求(③)をすることも可能ですが、代理権行使に係る手続上の問題もあり、利用は例外的です。