実親の養子縁組した子との面会交流に関する大阪高決H28.8.31

 夫婦が離婚し、未成年者Aの親権者かつ監護親となった親(Y)がBと再婚しBとAが養子縁組をすることも多々あります。

 非監護親(X)はAの実親としてAと面会交流する権利がありますが、AとBが新たな親子関係を築いている際にAが実親Xと面会交流することが支障になるという考えもあり得ます。

 このような事案で、大阪高裁平成28年8月31日決定は、XのAとの面会交流を認めており、参考となりますのでご紹介します。

大阪高裁平成28年8月31日決定

 同決定は次のように述べて、XのAとの面会交流を認めた大阪家裁平成28年3月17日審判を支持しました。

「Yは、未成年者らはBと養子縁組をし、新しい家族関係を築きつつあり、Xとの面会交流によらずとも未成年者らが健全に成長することは可能であり、かえって未成年者らとXが面会交流を行えば、Xが未成年者らにYの悪口を言うなどすることにより、未成年者らに忠誠葛藤を生じさせるなどして、その健全な成長を阻害する危険性が高いと主張する。

 しかし、未成年者らは、離婚後、Xを恋しがる態度を示していたこと、未成年者○は、~良い思い出を持っていることは原審判を引用して認定したとおりであり、こうした未成年者らが非監護親であるXからも愛されていると認識する機会を持つことは未成年者らの健全な成長に資するものであり、YとBが未成年者らとともに新しい家庭を構築する途上にあるとしても、Xとの面会交流を認めることは未成年者らの福祉に適うというべきである。なお、Yは、Xは未成年者らと面会すれば、未成年者らの健全な成長を阻害する行為に及ぶ可能性が高い旨主張するが、これを認めるに足りる資料はない。もっとも未成年者らがXと面会することにより、その心情に影響を与えることは否定できないが、そのような影響は面会交流を継続していく中で解消していくことが考えられる上、YやBは親権者・監護親として、面会交流を円滑に実施されるように配慮する義務がある。」

コメント

 上記決定は、抽象論のみで面会交流を認めたものではなく、調査官による調査をもとに、子がXと面会交流を行うことが子の福祉にも適うと判断したものです。

(弁護士 井上元)