離婚後300日以内出生子の嫡出推定についての最高裁決定

マスコミ報道によりますと、離婚後300日以内に生まれた子は婚姻時の夫の子と推定する民法の規定により出生届を不受理としたのは「法の下の平等」を定めた憲法に違反するなどとして、国と市を相手に損害賠償を求めた事件の上告審で、最高裁第二小法廷は平成23年11月30日付けで、原告側の上告を棄却する決定をし、請求を棄却した一、二審判決が確定したとのことです。

民法772条2項では「婚姻の成立の日から200日以内を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定されています。離婚から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものであり、その子は婚姻中の夫の子供だと推定するということです。

この規定により、戸籍実務では、離婚後300日以内に生まれた子は、たとえ長年別居しており前夫の子ではなくとも、前夫の嫡出子としての出生届しか受け付けないものとされているのです。この場合、前夫の子としての戸籍の記載をさせないためには、前夫を相手方として親子関係不存在確認の訴えなどを起こさなければなりません。上記の件では、現夫を父とする認知調停が成立し、出生届が受理されたようですが、もともとの不受理が違法だとする訴訟については、最高裁は違法だと認めなかったのです。

離婚後300日以内に生まれた子であっても懐胎したのが離婚後である旨の医師による「懐胎時期に関する証明書」を添付すれば現夫を父とする出生届が受理されるものとされています(平成19年5月7日法務省民事局)。しかし、上記の件では、この場合には当らないと判断されたようです。

また、婚姻前に懐胎し、婚姻後に出生した子については嫡出推定を受けませんので、嫡出でない子としての出生届ができるようです。

(弁護士 井上元)